KIC(KOSEN Incubate Committee、以下KIC)のプログラムでは、事業構築に必要な知識を学ぶレクチャーや、自身のアイデアを形にするためのメンタリングを提供しています。本プログラムに参加し、さらにそこで構築した事業アイデアでGAPファンドを獲得し、その資金をもとに実証実験を行っている函館工業高等専門学校の西野さんにインタビューを実施しました。人生で初めて事業アイデアの創出に挑戦する中で、多くの気づきと葛藤を経験した西野さん。この記事では、西野さんがKICに参加したきっかけやプログラムを通じて得た学びについて紹介します。
インタビュアー(以下、I):
今日はお時間をいただきありがとうございます。まずは、KICに参加したきっかけについて教えていただけますか?
西野さん(以下、西野):
こちらこそありがとうございます。私がKICに参加した理由は、高専に入学したときから「ものづくり」に興味があったことが大きいです。最初はゲーム制作に興味があったんですが、化学の技術を活かして地元函館のために商品を作る先生に出会い、その先生に憧れて化学の道を志しました。自分が作ったものが社会で求められる、そんなものを作りたいという思いが強くなり、KICに挑戦してみようと思いました。
I:
なるほど、先生との出会いが大きな影響を与えたんですね。参加前に不安はありましたか?
西野:
正直、ありましたね(笑)。新しい事業を考えるなんて初めての経験だったので、「本当に自分にできるのかな?」と不安でした。最初は「なんだかあやしいな」と思っていたくらいです。でも、プログラムを通じて「お客様目線で考えること」の大切さを学びました。これまで自分がものを買うときにあまり意識していなかったことを、改めて考えるきっかけになりました。
I:
お客様目線で考えることを学んだとのことですが、具体的にはどのような経験をされたのでしょうか?
西野:
クラウドファンディングを活用して、お客様の声を聴く経験をしました。返礼品を検討する際に、自分の仮説が正しいかどうかを判断するために、お客様の声を直接聴くことが重要だと気づきました。理想と現実のギャップを感じることも多かったですが、それが大きな学びになりました。
I:
クラウドファンディングを通じて、実際にお客様の声を聴く経験、つまりニーズ検証を実施されたんですね。プログラム期間中には、どのような課題や困難がありましたか?
西野:
昨年は「お客様視点でプロダクトを考えること」に葛藤しました。自分が「これがいい!」と思ったものが、実際には全然ヒットしないという現実を突きつけられました。自分の面白さだけでは成り立たないんだと痛感しましたね。今年は「ビジネスモデルの実現」に向けて、早くたくさん行動することが求められましたが、メンバー間で足並みを揃えるのが大変でした。
I:
そのような課題に対して、どのように対処されたのでしょうか?
西野:
昨年は、現地の人の声を大切にし、一次情報を基に仮説を検証・ヒアリングすることを意識しました。今年は、チームビルディングに力を入れました。メンバーそれぞれの目的やモチベーションが違う中で、個々の目標を尊重しながら進めることを心がけました。
I:
チームでの活動は、個々の目的を共有することが重要なんですね。印象的なエピソードがあれば教えてください。
西野:
半年間のプログラムを終えた後、ギャップイヤーを経験しました。その中で表彰を受け、50万円の賞金をいただいたことがとても印象に残っています。自分の取り組みが評価されたことは、大きな自信になりました。
I:
それは素晴らしい経験ですね!プログラム中、メンターからのサポートもあったと思いますが、どのような学びがありましたか?
西野:
メンターの存在は本当に大きかったです。特に印象的だったのは、レクチャーとメンタリングの違いを実感したことです。レクチャーでは一連の流れを把握し、メンタリングでは具体的なヒアリングの方法や思考の整理を学びました。お客様に誘導尋問的な質問をしてしまったときに、メンターから指摘を受けて改善できたのも大きな学びでした。

I:
メンターの指導が、西野さんの成長に繋がったんですね。KICでの経験を活かして、これからどのようなことに挑戦したいですか?
西野:
これからは、新規事業を作り上げることに挑戦したいと考えています。特に、リーダーと共にチームを組み、やりたいことを実現していくことを目指しています。これまでのKICでの経験を通じて、事業を考え、実施することへのハードルが以前よりも低く感じられるようになりました。その結果、自分自身が積極的にチームを作り、メンバーと共に目標に向かって進む力を身につけることができました。
I:
最後に、KICをどのような学生におすすめしたいですか?
西野:
ものづくりやゲーム制作に興味があり、積極的に行動できる人におすすめしたいです。また、座学と実践のギャップを埋める意欲がある人にも向いていると思います。KICは、教科書通りにはいかない現場での課題解決力を養う場です。自分の知識や経験を活かして、枠組み通りにいかない課題に挑戦したい人にぜひ参加してほしいですね。
I:
西野さんの経験やお話を聞いて、KICがどのような場なのかがよく分かりました。本日は貴重なお話をありがとうございました!
西野:
こちらこそ、ありがとうございました!
まとめ
西野さんのKICでの経験は、ものづくりへの情熱をさらに深め、社会に求められるプロダクトを生み出す力を磨くものでした。お客様目線で考えることやチームビルディングの重要性を学び、これからも挑戦を続ける西野さんの姿は、多くの学生にとって刺激となるでしょう。